JTC(大企業)では、出世しない方が人生は自由になる ──「コース外れ」を経験した人間の現実的生存戦略【全10回連載 vol.9】


──出世を諦めた日の絶望は、人生を取り戻すためのスタートラインだった。

「今度の人事異動がっかりだ! 引導渡されたようなもんだな」

「これで俺も完全にコースから外された😩」

「これから何を楽しみに会社行きゃいいんだ?」

そんなふうに感じているあなたへ。

実は、JTC(Japanese Traditional Company:日本型大企業)では「出世しないこと」こそが、賢い選択になることもあるんです。

本記事では、出世レースから外れたことを嘆く前に知っておきたい“得な理由”について、実体験をもとに解説していきます。

<筆者紹介>

東京大学建築学科卒業後、スーパーゼネコン、大手インフラ企業に勤務。
約40年にわたり、日本型大企業(JTC)という共同体の内部を観測する。

出世競争という制度的ゲームからは早期に身を引き、
組織の評価ではなく、個人の「実体」に投資する道を選ぶ。


Ⅰ.出世レースに敗れたと気づいた時に持つべきマインドセットとは?

出世レースに敗れたと気づけば誰しも「絶望」しますが、たいていの人は「絶望」の意味を誤解しています。

例えば、駅でプラットホームを間違えたりバス停を間違えたとき、いつまでもそこで待っていますか?

これ以上出世できないと分かったら、「絶望」して次に進みましょう。

望みを絶つ(絶望)とは、そう言うことです。

新しい行動を起こすチャンスです。

以下、泉谷閑示 著『「普通がいい」という病』(Amazonアソシエイトリンク)から引用します。

つまり、本当に「絶望」した時、人は「執着」を去り、「自由」になるのです。

それはもはや、そこで当てにして待たなくてもよい「自由」です。

そして本当に必要な行動を、主体的に自分が行っていけるのです。

ただし、JTC(日本型大企業)の恵まれた雇用条件をわざわざ捨ててまで転職する必要はありません。

その恩恵はしっかり享受しつつ、サラリーマンとしての生き方を180度転換しましょう。

出世を餌に会社から利用されるサラリーマン人生ではなく、JTCの恵まれた雇用条件を利用して、自分のために生きるサラリーマン人生への転換です。


Ⅱ.JTCの社員は出世しない方が得な5つの理由

①忖度と忠誠心から解放される

組織で仕事に取り組むJTC(日本型大企業)は個人の裁量が小さいため、合理的に個人の能力や業績を評価するのは困難です。

そのため人事評価は、恣意的であいまいな情意評価にならざるを得ません。

情意評価とは、上司(評価者)の好き嫌いでどうにでもなる評価方法で、日本の共同体化した大企業によく見られます。

出世するために情意評価を上げるポイントは、上司への忖度と会社への忠誠心です。

忖度するとは、自分の人生を放棄して、忖度する相手の人生を生きるということです。

出世と言うニンジンをぶら下げられているので気づきませんが、他人の人生を生きることほどストレスが溜まることはありません。

出世すればするほど忖度しなければならない権力者の数は減りますが、評価を落とす恐怖感からストレスは激増します。

万病の元であるストレスは無いに越したことはありません。

②減点主義の恐怖から解放される

JTCの出世レースを勝ち抜くには、何かに成功するより、とにかく失敗しないことが重要です。

JTCの幹部は、不祥事などで責任を負うことを極端に恐れるあまり、イデオロギー化した完璧主義が社内に蔓延しています。

そのため、いくら加点主義を叫んでも口先だけになり、常に減点主義に怯えることになります。

出世レースの最中は失敗を恐れて部下をマイクロマネジメントする中間管理職が多いものですが、そのプレッシャーから解放されると力が抜け、部下との関係もぐっと良くなります。

その方が部下も育ち、出世とは違う仕事のやりがいも感じることができます。

COLUMN

──出世のコツは自分が判断しないことです

失敗を起こして出世競争から脱落しない究極の作戦は「自分が判断しない」ことです。JTCの幹部候補は決して自分では判断しません。


※ なぜJTCではこれほどまでに「減点主義」が蔓延るのか?次の記事では、その背景や構造的な理由を詳しく解説しています。

Coming Soon — 以下の記事は準備中です。公開まで少しお待ちください。

▶ なぜJTCでは「減点主義」が無くならないのか? ── 評判がリセットできない組織の生存戦略

③定年後のヨコの関係に順応しやすくなる

出世すればするほどタテの人間関係に順応するため、定年後の世界(ヨコの人間関係の世界)では孤独になります。

肩書は、会社と言う狭い共同体の「関係性」から生じた観念であるにもかかわらず、たまたま運よくその地位を手に入れた人物がもつ自然属性であるかのように振舞いはじめます。

※ 「関係性」に対立する概念は「実体」です。例えば、くしゃくしゃの汚れた1万円札と新札の5千円札のどちらかを選ぶ場合、「関係性(=交換価値)」で選べば1万円札を、「実体(=紙質)」で選べば5千円札を選ぶことになります。

部下が従っていたのは、その人自身ではなく、「肩書」というフィクションだったと気づくのは、多くの場合、役職定年で戦力外通告を受けた後です。

出世コースから早めに外れていれば、そんなことはとっくに気付き、定年後のヨコの人間関係にも自然に順応できます。

④定年に向けた自分への投資ができる

定年後の有り余る時間は、「楽しみ」にもなり、「辛さ」にもなります。

定年に向けて何も準備せず、出世レースに明け暮れていた人には、「辛さ」だけが待ち受けています。

定年後を「楽しみ」にするためには、現役時代、できれば定年の10年前からは時間とおカネを自分に投資しましょう。

具体的には、スポーツクラブなどで運動習慣を付けることや趣味の拡充です。

また、この準備を通して、世間一般のヨコのつながりにも慣れておきましょう。

⑤妻との関係を改善できる

出世レースのストレスや悩みは、家にいる時も引きずり夫婦喧嘩の原因になることもあります。

特にシニアに近づいてからの夫婦関係は、定年後に向けて重要です。

熟年離婚の原因の一つとして、「仕事に没頭しすぎて家庭を顧みない」が挙げられます。

定年が近づいて毎日夫が家にいると考えただけで嫌気がさし、退職金の財産分与と年金の分割分を要求されて熟年離婚なんてことも無いとは言えません。


Ⅲ.まとめ:JTCで「出世しない」が賢い選択である理由

JTC(日本型大企業)における出世レースの不条理な実態を知れば、「出世しないこと」は決して敗北ではなく、**自分の人生を取り戻すための「自由への切符」**になります。

1.「絶望」を「自由」に変えるマインドセット

出世の望みを断つ(絶望する)ことは、会社への執着を捨てることです。

JTCの安定した雇用条件という「恩恵」は享受しつつ、**「会社に利用される人生」から「会社を利用して自分のために生きる人生」**へと180度転換しましょう。

2.出世しないことで得られる5つのメリット

CHECK

①忖度と忠誠心から解放される

上司への忖度や忠誠心に縛られて「他人の人生」を生きる必要はなくなります。

②減点主義の恐怖から解放される

失敗を恐れて部下を責めたり、判断を先延ばしにしたりする必要がなくなり、仕事本来のやりがいを感じられるようになります。

③定年後のヨコの関係に順応しやすくなる

肩書きという「フィクション」に頼らず、一人の人間として「ヨコの人間関係」を築く準備ができます。

④定年に向けた自分への投資ができる

出世に費やしていた時間とお金を、健康維持や趣味の拡充に充て、定年後を「楽しみ」に変えられます。

⑤妻との関係を改善できる

仕事のストレスを家庭に持ち込まず、家族との時間を大切にすることで、熟年離婚のリスクを避けられます。

出世という「ニンジン」を追いかけるのをやめることは、組織の駒としての死を意味するのではなく、自分の人生の「オーナーシップ」を取り戻すことに他なりません。

多くの人が「肩書き」という名のフィクションに執着して心身を削る中、いち早くその虚構性を見抜き、大企業の恵まれた条件だけを「実利」として享受する。

この冷徹かつ賢明な生存戦略こそが、定年後の孤独や不安、あるいは熟年離婚という「本当の絶望」を回避する唯一の道です。

無理に出世の階段を登るのをやめた時、あなたは初めて、自分の足で自分の人生を歩き始めることができるのです。


Coming Soon — 以下の記事は準備中です。公開まで少しお待ちください。

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本記事は、JTCにおける「不条理な出世メカニズム」の構造を解き明かす全10回シリーズの一つです。他の視点を含めた総論は以下のまとめ記事をご覧ください。

▶ 【全10回連載まとめ】なぜ『出世は実力では決まらない』のか? ── JTCの「時代遅れのOS」が引き起こす構造的悲劇

※筆者について

本稿は、東京大学建築学科卒業後、スーパーゼネコンおよび大手インフラ企業にて約40年勤務した筆者の実体験と観測にもとづいている。

― 日本型大企業という共同体を内部から記録する ―

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