なぜJTC(大企業)では優秀な人ほど評価されないのか ? ── 目的を忘れた「共同体」の正体【全10回連載 vol.3】


競争よりも『結束』、ロジックよりも『空気』。──  大企業が有能な人間を評価しない理由。

「圧倒的な成果を出しているのに、思ったほど評価されない」

「最小のコストで最大の結果を出したのに、残業をしている同僚の方が評価される」

もしあなたがJTC(Japanese Traditional Company:日本型大企業)でこのような理不尽を感じているなら、それはあなたの能力不足ではありません。

むしろ、あなたの優秀さが「共同体の秩序」を脅かしているからです。

JTCという特殊な環境において、なぜ合理性が敗北するのか。

本記事では、その不条理な構造を解き明かします。

<筆者紹介>

東京大学建築学科卒業後、スーパーゼネコン、大手インフラ企業に勤務。
約40年にわたり、日本型大企業(JTC)という共同体の内部を観測する。

出世競争という制度的ゲームからは早期に身を引き、
組織の評価ではなく、個人の「実体」に投資する道を選ぶ。


Ⅰ. 評価の尺度は「目的達成」ではなく「結束力」

日本型経営のJTC(日本型大企業)は、メンバーシップ型雇用(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)が原因で社員が固定化・同質化・一体化し、運命共同体となっています。

理解を深めるために、企業の本来あるべき姿「機能体」と「共同体」の比較表を下に示します。

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組織形態 機能体(本来の会社) 共同体(JTCの実態)
組織の目標 目的の追求 居心地の追求
組織評価の尺度 目的達成力 結束力と仲間意識
理想の状態 最小コストで最大効果 公平性と安住感
個人評価の尺度 客観的評価による成果と能力 主観的評価による人気と人格

参考図書:堺屋太一 著『組織の盛衰』

この「共同体」において、組織が最も重視する評価尺度は、ビジネスの目的達成力ではなく、「結束力と仲間意識」です。

そのため、次のような傾向が見られます。

 ── 効率よりも「チームワーク」

一人の力で効率的に成果を出す人よりも、チームワークを重視した「がんばり」や「汗かき」の方が評価されます。

仕事の成果やスキルではなく、態度・意欲・協調性など“働く姿勢”を評価する情意評価が、人事評価の中心になっているのはそのためです。


Ⅱ. 優秀な人は「秩序の破壊者」とみなされる

JTC(日本型大企業)というムラ社会(共同体)では、全員が「ほどほどの能力」で均衡を保っていることが良しとされます。

ここで誰かが「最小コストで最大効果」という合理性を持ち込むと、組織には以下のような拒絶反応が起こります。

 ──「打たれる杭」のメカニズム

一人だけずば抜けた能力を発揮する人が現れると、他のメンバーは「自分たちの地位が脅かされる」「自分たちの無能さが露呈する」という恐怖を感じます。

その結果、組織は「あいつは協調性がない」「やり方が強引だ」といったレッテルを貼り、優秀な人の評価を切り下げることで、元の居心地の良い「ぬるま湯の秩序」を守ろうとするのです。


Ⅲ. JTCが追求するのは「居心地」という名の不条理

結局のところ、共同体であるJTC(日本型大企業)では、「居心地の良さ」を維持することが優先されます。

そのためには、メンバー同士が競争しない環境を整えることが重要です。

メンバー同士の競争は、居心地の悪い緊張感を引き起こすからです。

みんなが気楽な組織に安住し、収益と権限と地位を分かち合える状態ほど、共同体化した企業の(社長も含めた)メンバーにとって居心地のよいものはありません。

そのため、組織の共同体化が進むと、組織内でメンバーの個人的競争を排除する動きが必ず起こります。

その象徴的な現象とは、人事において抜擢を避け、評価に大きな差をつけないことです。

これはビジネスとしては不条理ですが、共同体を守る本能としては極めて合理的です。

つまり、JTCという共同体の本質は、次になります。

①不条理な楽園

成果を出さなくても首を切られず、仲間意識さえあれば守られる。

この安心感こそが、JTCという共同体のメンバーが死守したい既得権益です。

作家の橘玲氏は、著書『バカが多いのには理由がある』の中で、こういった日本のサラリーマン社会(特にJTC)を「腐った楽園」と呼んでいます。

②合理性の敗北

「効率」や「論理」を突き詰める優秀な人は、この「居心地の良い楽園」を壊しに来る侵入者でしかありません。


Ⅳ.まとめ:組織に期待せず「個」の力を温存せよ

もしあなたが「優秀すぎて評価されない」という壁にぶつかっているなら、その組織で正当な評価を勝ち取ろうと消耗するのは賢明ではありません。

彼らが求めているのは「有能な社員」ではなく「空気の読める隣人」だからです。

JTCという共同体の中では、最小限の労力で「仲間」を演じつつ、余ったエネルギーを「個の資本」を蓄えるために投資してください。

私は共同体の「空気」から距離を取って、肉体改造など自己投資に励みました。

不条理な世界に魂まで染まる必要はありません。

あなたは、あなたの知性を守り抜く権利があるのです。


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本記事は、JTCにおける「不条理な出世メカニズム」の構造を解き明かす全10回シリーズの一つです。他の視点を含めた総論は以下のまとめ記事をご覧ください。

▶ 【全10回連載まとめ】なぜ『出世は実力では決まらない』のか? ── JTCの「時代遅れのOS」が引き起こす構造的悲劇

※筆者について

本稿は、東京大学建築学科卒業後、スーパーゼネコンおよび大手インフラ企業にて約40年勤務した筆者の実体験と観測にもとづいている。

― 日本型大企業という共同体を内部から記録する ―